プロフェッショナルサービス研究 その8

ここからは、実際のマーケティング戦略について考えていきます。

マーケティング戦略

専門家のマーケティング戦略には、特徴があります。

『専門家のマーケティング戦略における特徴』
専門家の顧客は、一度に一人(社)ずつしか獲得することができない

たとえば、飲食店の場合、一度に2-4人のお客様が入店します。それが短時間に複数回起こることも多々あります。顧客数と購買回数が多いわけです。一方で、専門家の場合、一度に1人(社)しか獲得できません。それも、成約までに対面で会話をして、信頼を得なければなりません。時間もかかります。これは、専門家の提供する商品が、専門的なサービスであり、信頼の置ける専門性や信頼を得る必要があるからです。

そのため、専門家のマーケティング戦略においては、ある目標が必要です。
それは、次のようなものです。

最小の労力と時間、コストで、潜在的な顧客と、対面で(顧客の問題についての)個人的な会話をすること

これを実現することで、専門性を示すことができ、信頼を得ることができます。しかも、少ない労力と時間、コストで、です。ここでは、専門家のマーケティング戦略の代表的なアプローチを列挙します。

専門家のマーケティング戦略・5つのカテゴリ

・プッシュ型アプローチ
・プル型アプローチ
・ツール
・イベント
・ネットワーク(人脈)

1. プッシュ型アプローチ
プッシュ型アプローチは「攻め」のアプローチです。こちらから、潜在的な顧客に向けてアプローチします。たとえば、テレマーケティング(新規、定期的な電話、両方)、ダイレクトメール、ファックスDM、チラシ、訪問(アポあり、飛び込み両方)などがあります。

2.プル型アプローチ
プル型アプローチは「引き込む」アプローチです。潜在的な顧客のほうから、声掛けいただくようにするアプローチです。たとえば、インターネット広告、新聞広告、雑誌広告、テレビCM、ラジオCM、業界誌広告、ミニコミ誌広告、パブリシティ/PR、新聞・雑誌への記事提供、独自調査の発表、文化・スポーツイベントのスポンサーなどがあります。

3.ツール
ツールはこれら全体的なマーケティング戦略を補完、補強するアプローチです。たとえば、ウェブサイト、名刺、小冊子、ニュースレター、会社案内などがあります。

4.イベント
イベントは潜在的な顧客に対して、一度に複数人にアプローチできる方法です。たとえば、講演、セミナー、イベント、勉強会、交流会、事務所に招待などがあります。

5.ネットワーク(人脈)
ネットワークは自分のネットワーク(人脈)を活用することで、潜在的な顧客にアプローチするものです。たとえば、人縁、紹介、会合出席、提携、地域活動、市民活動、コミュニティ活動(趣味のコミュニティなど)などがあります。

どのようなマーケティング戦略が適しているかは、概ねWhatとWhoによって変化します。

参考例:
「1997年に、アメリカで行なわれた「成功した建築事務所の戦略」についての結果」
・1,500以上の潜在顧客の情報をデータベース化し、定期的に顧客の状況を追跡する。(⇒Who)
・他の建築事務所やエンジニアリング会社と戦略的提携関係を結ぶ。(⇒How)
・医療関係の建物や研究所といった特化分野の建築に詳しい専門家を雇用して、顧客の視点を採り入れる。(⇒What)
・特化分野について革新的な建築をテーマにシンポジウムを開いたり、経営トップが本を執筆したりして、組織が業界の第一人者であることをアピールする。(⇒How)

参考文献:Linn, Charles and Pearson, Clifford. “Lessons from America’s Best-Managed Firms,” Architectural Record (January 1997), p106.



プロフェッショナルサービス研究 その7

次に考慮すべきポイントは「How? (どのようにして?)」ということです。

3. How? (どのようにして?)

a) 時間管理戦略/b) マーケティング戦略=How?

a) 時間管理戦略:
自分の時間=すべての収益源
通常、合計10時間かかる仕事を5時間でこなす ⇒ (処理量が2倍で)収益は2倍になる

反面、人が使える時間は、1年で365日、24時間と限界があります。
ゆえに、時間をいかに効率的に使うかが、ビジネスにおける重要な問題となります。

【プロフェッショナル・サービスにおける時間管理、7つのポイント】

1.移動エリアの集中
2.ブロッキング
3.来社型モデル
4.電話による事前チェック
5.プロセスの標準化
6.イベント開催
7.委任

1.移動エリアの集中
移動時間は、収益を生まない上に、労働時間における比率が多くなりがちです。非生産的です。
移動エリアを集中させることで、移動時間の短縮・時間効率の上昇がはかれます。

2.ブロッキング
用件をある一定のブロックに集める。
例:面会の予定①、面会の予定②、面会の予定③
ブロッキングでない場合:①月曜日・午後3時から、②水曜日・午後4時から、③金曜日・午前11時から
ブロッキングの場合:①月曜日・午前11時から、②月曜日・午後1時から、③月曜日・午後3時から
こうすることで、それ以外の時間が大きく空くことになり、重要な仕事にじっくりと取り組むことができます。

3.来社型モデル
前述の通り、移動時間は、仕事時間において、大きな比率を占めています。
⇒ 移動時間の最小化=時間の捻出 
⇒ 来社(相手に来てもらうこと)によって、移動時間の負担を相手方に背負ってもらう

参考例:医師+病院(患者は、病院に来院して、診察を受ける)

4.電話による事前チェック
あなたの時間は、有限であり、非常に価値が高いです。
そのため、無駄な用件で、時間を無駄にできるほど、時間はありません。

そこで、実際に会う前に、事前に
電話にて、用件や必要性、直接会って話をするほどの価値があるのかどうかを判断。
⇒ 価値がないと判断できれば、その分の時間が浮くことに

5.プロセスの標準化
あなたでなくても、ある(任意の)仕事を処理できるように、プロセスを標準化します。
標準化・マニュアル化することで、ほとんど誰でもできるようにすれば、あなたしかできない仕事に集中できます。

6.イベント開催
わざわざ、一人ひとりと会っていると、非常に膨大な時間がかかります。
そこで、一度に多くの人と顔を合わせることができるのが、イベント。
時間効率が上昇します。

例:セミナー、講演会、ホームパーティ、交流会など

7.委任
自分でなければできない仕事、自分でやるほどの価値のない仕事は、委任する(他人に任せてしまう)こと。
秘書、アシスタントの活用。

究極的なプロフェッショナル・サービスは、必然的に、その個性・個が重要であることから、どうしても個(その人自身)に依存し、職務が集中しがちです。
⇒ 秘書・アシスタントを数人活用することで、時間を捻出 
⇒ 処理量の増大 
⇒ 収益・収入の増大



プロフェッショナルサービス研究 その6

次に考慮すべきポイントは「Who?(誰に?)」ということです。

2. Who? (誰に?)

顧客戦略/地域戦略=Who?

あなたが顧客を獲得したいと望むのであれば、顧客になりそうなのは、誰なのかを明確にしておかなければなりません。

なぜでしょうか?

間違った相手にアプローチしても、意味がないからです。

間違った相手にアプローチした例:
・テレビを見ない人に、テレビを売り込む。
・車に興味がない人に、フェラーリを売り込む。
・航空会社以外に航空機を売り込む。(ボーイング777は、一機約250億円)

間違った相手にアプローチしても、モノは売れません。

どういう人を顧客にしたいのか、どういう人に顧客になってもらいたいのか。
それらを考慮すべきです。



プロフェッショナルサービス研究 その5

プロフェッショナルサービスビジネスを成功させるには、3つの考慮すべきポイントがあります。

1. What?(何を?)
2. Who?(誰に?)
3. How?(どのようにして?)

の3つです。

1. What?(何を?)
競合他社との差別化/サービス・商品戦略/価格戦略=What

2. Who?(誰に?)
顧客戦略/地域戦略=Who

3. How?(どのようにして?)
時間管理戦略/マーケティング戦略=How

この3つを考慮していくことが、自己分析であり、戦略を考えていく上で重要です。

1. What? (何を?)

競合他社との差別化/サービス・商品戦略/価格戦略=What?

考えるべきテーマ:
顧客に自社のサービスをアピールするためには、提供するサービスが、どのようなもので(定義)、ライバルとどのような違いがあるのか(差別化)を明確にしなければなりません。※ただし、定義は比較的容易(資格業のサービスは一般に認知されているため)な場合も多いです。

「ライバルとどのような違いがあるのか(差別化)?」

激化する競争のなかでは、この差別化が重要になってきます。

一番効果的な差別化は「何かのセグメントで一位をとること」です。
※セグメント=細分化された市場のこと。

「何かのセグメントで一位をとること」

「何かのセグメントで一位をとること」を実現する方法論のひとつに、セグメントの定義があります。あるニッチ市場(小さな市場)において、40%以上のシェアがとれるようなマーケットセグメントに定義することで、一位のとれるセグメント設定をします。

セグメントの定義の仕方例:
1. 営業エリアを縮小、フォーカス(絞る)
ライバルの戦略リサーチして、手薄な営業エリア、支配できそうな営業エリアに絞ります。

2. 戦略製品の選択
市場をさらに製品・サービス別に分け、成長商品とダメ商品を明確に認識。絞ります。

明確な差別化が実現すれば、顧客から選ばれる会社になります。
提供すべき商品が目に見えないサービスである以上、ブランドイメージや専門性、実績などが差別化要因になります。



プロフェッショナルサービス研究 その4

ここまで、プロフェッショナルサービスビジネスの問題点を明確にしていきました。

ここからは解決策について考察していきたいと思いますが、その前にプロフェッショナルサービスビジネス(専門家ビジネス)そのものの分析をしておきたいと思います。解決策を考えていく上での前提となる現状把握です。

プロフェッショナルサービスビジネスの5つの重要な特徴

1.差別化が困難である
2.信頼性が重要
3.価格設定が重要
4.時間管理が重要
5.人材が重要

1.差別化が困難である
基本的に、専門サービスは、競合との違いがわかりづらいです。
その違いがわかるためには、それ相応の専門知識が必要です(そのような顧客は、ほとんどいない)。

また、基本的には、卓越した品質が重要です。
加えて、差別化が困難なために、提供者(専門家)自身の個性、キャラクター、個が重要になってきます。

2.信頼性が重要
上記のことと密接に関連します。

専門サービスは、品質評価しづらいです(サービスを受けた後でさえ、サービスの質がわからないことも)。
経験(類似の経験)、実績、業歴、年数、年齢、品性が信頼性に影響を与えます。

例:脳外科手術3,000回の脳外科医 vs 未経験の新人医師
「あなたは、脳外科手術をどちらの医師に依頼しますか?」

3.価格設定が重要
価格:10,000円 固定費:2,000円 利益:8,000円
価格:15,000円 固定費:2,000円 利益:13,000円

これらは、どちらも「同じ時間で」上げた利益です。
価格設定次第では、同じ仕事をした場合に、大きな利益になることもあれば、小さな利益になってしまうこともあります。

さらに価格はあいまいです。
言い値だったり、立場関係で決まったりと、非常にあいまいです。
それは原価がないからです(人件費のみ)。

4.時間管理が重要
ビジネスの構造上、サービス提供者が販売活動をしなければならないです。
そのため、時間がなくなってしまい、時間の欠乏になりがちです。
時間管理をきちんとしなければ、うまく仕事をしていくことが難しくなります。

5.人材が重要
顧客は、組織ではなく、個人につく傾向があります。
担当がいれば、担当者に顧客がつきます。

そのため、専門サービスを提供している個人が非常に重要になってきます。
個人(人材)の重要性。

しかし、個人には、能力値に幅があります。
優秀な個人とそうでない個人に分かれます。

そのため、組織の規模の拡張性が悪いです。
売上の持続的な成長をするための壁は、一般的なビジネスと比較して厚いです。
それは、優秀な個人をたくさんリクルートしてこなければならないためです。

以上がプロフェッショナルサービスビジネスそのものの考察です。
では、次回からは解決策についてじっくりと考えていきたいと思います。