住宅設計

家づくりは制約と合理性で彩られている

家づくりは制約と合理性で彩られている

注文住宅は出来上がってしまって販売される建売の一戸建て住宅や分譲マンションと違って、自由につくることができるように思われます。「完全自由設計」とうたっている住宅会社もありますので、なんでも自由に好きなようにつくることができるように錯覚します。

ただ、実際には注文住宅で自由設計だとしても「できないものはあります」。また、多くは「できるけれども、しないほうがいい」というケースも多々あります。

なぜでしょうか?

それは「家づくりは制約と合理性で彩られている」からです。

家づくりは制約と合理性で彩られている

この「家づくりは制約と合理性で彩られている」ということを端的に表す例は、マンションがあります。

マンションは賃貸マンションでも、分譲マンションでも基本的には同じです。住宅・建築業界では「集合住宅」と呼ばれます。住宅が集合しているから、集合住宅ですね(ここでは、集合住宅ではなく、マンションと呼びます)。

マンションはその規模が大きいものも、小さいものも、ほとんど同じようなものです。そして、その家のつくりは、戸建て住宅とは全く異なります。それは「制約」と「合理性」によってコントロールされるからです。

あるマンション用地があったとして、その土地にマンションを建てる場合、どう設計する必要があるでしょうか。

まず、ワンフロアに一部屋というわけにはいきません。そこで、一定の間口に対して、できるだけ多くの家を入れようとします。さらに日当たりがいいのが南側ですから、南側に窓やベランダ(開口部)を設けたいです。南側に設置できる場合は、南側に開口部が設置されます。そうなると、玄関は北側になります。

これで、南北をラインとする間口が狭く、奥行きの長いかたちの家ができます。もちろん、両側は壁を共有した上で、別の家です。これがマンションにおける基本的な制約であり、経済合理性から生まれる帰結です。

そこから、経済合理性で設計していきます。

南側に開口部があります。建物の各階両端の家であれば、端にも開口部ができます。ただ、端でないケースがほとんどですから、その開口部が唯一、外とつながっている部分です。

そのため、そこにベランダを付けます。日当たり、外が見えるという、その家で一番条件のいい場所ですから、リビング(居間)やダイニングをとります。実際はリビングダイニングが多いです。これに台所と水周りをつくれば、LDKになります。

ここから、玄関と開口部+リビングダイニングを結ぶ廊下を延ばします。玄関部分に近いところに廊下を挟んで部屋を2室つくります。2LDKです。そこから、もう少し廊下を延ばします。家の中央を突っ切る廊下で、リビングダイニングに近いほうの片方をキッチン(台所)にします。反対を水周りや和室をつくると、3LDKになります。間口が広い場合は、外に接するところに1室つくるか、区分けのやり方を変えて1室つくります。4LDKの完成です。

このように、制約と経済合理性によって、マンションは設計されます。ですから、たくさんのマンションのチラシで間取りをご覧になった方は、同じようなフォーマットの間取りが多いことに気づかれると思います。もちろんマンションでも、採光、通風、また立地条件により工夫され、少し変わった間取りのものもあります。ただ、結局それらは価格に反映されてきます。

もちろん、新築一戸建ての注文住宅であろうが、建売住宅であろうが、制約はあります。経済合理性もあります。その度合いは異なりますが。

それぞれ、このような背景があることは知っておいたほうがよろしいかと思います。