住宅に本当に求められる機能は何か?

住宅に本当に求められる機能は何か?

住宅は人々の生活と共にその意味を変化させています。大昔には竪穴式住居。そこには「かまど」と居住スペース、つまり、食事をして、家族が集まり、寝る場所だったのです。

そこから、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、江戸時代と変遷をたどっていくのですが、基本的な機能は大きくは変わっていません。土間があって、かまどがあり、食事ができる。それに加えて、板間があって、家族が集まり、寝るスペースがあるわけです。

もちろん、貴族階級の家は違います。鎌倉以降の武家社会においては、床の間という来客を招くエリアを機能として付加します。お手伝いが基本的にはいるわけですから、家人は土間には入りません。ただ、これらはあくまでごく少数の上層の人々の家だけです。

最初に「住宅は人々の生活と共にその意味を変化させています」とお話しました。しかし、ここまでのところ、時代の変遷と住宅の意味は変化していないように思われます。住宅の基本的機能としての「食事」と「家族だんらん」、「寝る」機能です。

ただ、この数十年。日本は戦後から、急激に住宅の意味を変化させてきたのです。

それは日本人の現代生活が食事時間、家族だんらん時間の減少させる傾向にあるからです。

かつて、江戸から明治時代までは、日本人の多くは農業に従事していました。家は家族と共にあり、家の周りで仕事(農作業)をして、家に帰って食事して、眠る。そういう人生です。

時代が変化して、社会生活も変化します。イギリスの産業革命に伴い、工業化社会へと変化します。農業に従事していた農村の人々は都会に出て、工場で働きます。この流れは明治、大正、昭和と勢いづきます。

都心部はオフィス、工場でにぎわいます。人々は郊外から都心へ勤めに出ます。これが大いに勢いづくのが、高度経済成長期です。そこからのバブル期。現在へとつづきます。

物質的に成熟した現在では、かつて家庭で担われていた機能がいくつも外注されることになります

食事でいえば、ファミリーレストラン、居酒屋、定食屋などのレストラン。最近、多くなっているのが「中食」。お総菜を買って持ち帰ることや、持ち帰り弁当を買って家で食べることです。これらで食事は外注化されます。

加えて、家族は全員忙しい生活をしています。ご主人は外に仕事に出て、忙しく働きます。家には帰って寝るだけが基本です。奥さんも働いている場合が多いです。専業主婦でも、家にずっといないことも多いです。子供も忙しいです。学校、習い事、塾。勉強に友達づきあいに大変です。

これらで、食事時間も、家族だんらん時間も減少します。家族が一緒にいられる時間は少なくなっているのです。かつては、農作業でずっと一緒にいたはずの家族は今や、寝るときだけ一緒なのです。

住宅はいくつもの機能をもっています。ただ、何のために住宅があるのかと問われれば、それは「家族のため」です。すべての機能は「家族のため」になされるべきです。

寝る時間を共にすることも大切です。ただ、それに加えて、家族だんらんの時間を増やすことも大切です。家族全員が多忙な生活を送っているのは現代社会では不可避です。仕方ない面も多いです。

ただ、それでも家族だんらんの時間、一緒にいられる時間を長く、そして、充実したものにすること。それが現代の住宅に求められる大きな機能なのだと思います。



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