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国家債務危機 ジャック・アタリ (著) #201

日本では過剰な債務が問題になっています。
加えて、財政赤字。年金問題。そして、消費税の増税。

これらの経済問題・政治問題はつまるところ、現在、日本国が破綻(倒産)するか、それとも持続し続けられるのか、というターニングポイントにあるということにつきます。

今回採り上げるのは、その国家破綻、国家債務危機について書かれた一冊。
ジャック・アタリ氏の「国家債務危機」です。

第一章から第四章までは国家債務、および国家破綻の歴史です。
そもそもの公的債務が誕生したとき。イギリス、イタリア、フランスについての話。
そして、国家破綻の歴史についてです。

内容については、本書をご覧いただきたいのですが、歴史的にみると、国家破綻は例外的な事象ではなく、それなりに何度も起きてきた事態であることがわかります。国家が債務を積み上げ、維持不可能になり、モラトリアム(債務返済の一時停止)、インフレ、デフォルト(債務支払停止)を引き起こしてきた歴史です。ちなみに、スペインは1500ー1900年の間に、合計13回もデフォルトに陥っており、主権債務の「デフォルト世界記録」を持っているそうです。

さて、私自身が興味深かったのは、やはり「第5章 債務危機の歴史から学ぶ12の教訓」の部分です。

1 公的債務とは、親が子供に、相続放棄できない借金を負わせることである
2 公的債務は、経済成長に役立つことも、鈍化させることもある
3 市場は、主権者が公的債務のために発展させた金融手段を用いて、主権者に襲いかかる
4 貯蓄投資バランスと財政収支・貿易サービス収支は、密接に結びついている
5 主権者が、税収の伸び率よりも支出を増加させる傾向を是正しないかぎり、主権債務の増加は不可避となる
6 国内貯蓄によってまかなわれている公的債務であれば、耐え得る
7 債権者が債務者を支援しないと、債務者は債権者を支援しない
8 公的債務危機が切迫すると、政府は救いがたい楽観主義者となり、切り抜けることは可能だと考える
9 主権債務危機が勃発するのは、杓子定規な債務比率を超えた時よりも、市場の信頼が失われる時である
10 主権債務の解消には八つもの戦略があるが、常に採用される戦略はインフレである
11 過剰債務に陥った国のほとんどは、最終的にデフォルトする
12 責任感ある主権者であれば、経常費を借入によってまかなってはならない。また投資は、自らの返済能力の範囲に制限しなければならない

細かい内容は本書をご覧いただくとして、いくつかピックアップしたいと思います。

個人的にピックアップしたいのは、公的予算の構造的赤字体質です。

公的予算の構造的赤字体質

民主主義の台頭により、教育、医療、年金といった公共サービスが提供されるようになり、これを公的支出でまかなうようになります。

加えて、公的支出は国家の生産性を保障するために必要な職務(軍人・医師・教師・警察官など)への給与に費やされます。

これらが公的支出の原点です。

さて、政府にとって、公的予算という面では、収入を増加させるよりも、支出を増加させることが容易であるという構造があります。

公的支出を新しく発生させること、増額することは極めて容易です。
また、減税や税金の廃止についても、反対する人はあまりいません。
ですから、実施は容易です。

反対に、公的支出の削減は困難です。
それは、既得権者を説得する必要があるからです。これは極めて困難な作業です。
新税の導入、増税など、政治的に極めて難しいです。

公的予算において、支出の増加が容易であるのに対して、収入の増加は極めて困難なのです。
つまり、公的予算は構造的に赤字になることが必然なのです。
公的予算のバランスを取るには増税によってしか実現できないわけです。

もちろん、増税は実現が難しいです。
社会的な反対が大きいからです。

そこで、公的給付を削減することも考えられますが、公共サービスの重要性などから難しいです。

つまり、構造的に問題がある前提で、いかに運営していくのか、というのが国家運営であるわけです。

主権債務の解消については、8つの戦略があるそうです。
増税、歳出削減、経済成長、低金利、インフレ、戦争、外資導入、デフォルトです。
これらの解決手段の中で、インフレが頻繁に利用されるそうです。

結局、公的債務が健全な債務のレベルを超える場合には、債務を削減するためにプライマリー・バランスを黒字化させなければならないわけです。

そのためには、公的支出の削減、あるいは増税が必要となるそうです。

国家の債務危機問題はもちろん、日本国にとっても喫緊の問題です。
ただ、実は日本だけではなく、アメリカ、イギリス、EU(ヨーロッパ)においても重大な問題なのです。

現在は経済が相互に密接に依存しあって存在しています。
さらにEU圏内でも、国家債務危機に瀕している国々がいくつもあるのです。

このような世界的な問題。
重大です。

今後も、知見を深めていきたいと思います。