
神戸大学大学院経営学研究科教授の著者 三品和広氏が「持続的な利益成長を遂げる企業とそうでない企業は、どこが違うのか」というテーマについて研究したものが本書。
本書はその主旨を述べんがために、日本政策投資銀行のデータベースを用いて、金融・保険業界をのぞく1013社のデータを調査し、お金と時間、労力を費やしてまとめたものです。
貴重ですね。
こういうコストパフォーマンスが本の良さでしょう。
「戦略不全の因果」の論旨
さて、本書の論旨は、次のようにまとめられます。
事業立地を定める営為こそが経営戦略の真髄である
表紙の裏側に書かれてあることが印象的です。
経営者が初期値をどこにとるか、そして肥沃な立地への転地を遂げられるか否かで決まる。
経営者が不毛な立地を選んだとしたら、その時点で、戦略不全企業は十字架を背負うようなことになっている。選択の余地があるときに選択を間違えると、末代まで禍根を残すことになるのである。
立地の選択という初期値、それだけで長期にわたる足枷をかけられることになるそうです。
概ね、下記の「訓戒」「指針」にまとめられます。
「訓戒」
・実質ベースの利益成長を40年にわたって維持することは難しい
・利益成長基調が続きにくいのは事業立地に寿命があるからである
・企業が立地の寿命を超えて生き延びるには転地を遂げるしかない
・転地を含めて事業立地を定める営為こそが経営戦略の真髄である
・企業の命運は戦略のできる経営者に恵まれるか否かで決まる
・日本企業の停滞は創業経営者の引退とともに始まった
・優れた経営者も後継指名にいは失敗することが意外と多い
・日本の課題は世襲より専門経営者による企業支配にある
「指針」
・経営職適格人材は採用しなければ手に入らない
・経営職適格人材を見極めるタイミングは30代の前半にある
・経営職適格人材は仕事で磨かれない
・経営者の指名方式には制度改革の余地がある
・今の日本はストックオプションやガバナンスの時代ではない
個人的に印象的だったのは2つ。
序章の「心象風景1」。
本書のインスピレーションの源泉となった出来事だそう。
創業者のエネルギー
ハム業界には、有力企業が四社あります。
伊藤ハム、プリマハム、日本ハム、丸大食品です。
1963年から1972年の10年間。
業界を先行したのは、プリマハムでした。
順位は、プリマハム、伊藤ハム、日本ハム、丸大食品です。
1973年から1979年の7年間。
プリマハムは業界3位に転落。
順位は、伊藤ハム、日本ハム、プリマハム、丸大食品となります。
ちなみに、1979年11月にプリマハム創業者、竹岸政則氏が病死しています。
そこから、2001年に至るまでの順位はこうです。
日本ハム、伊藤ハム、プリマハム、丸大食品。
1980年ごろから、日本ハムの一強体制になります。
その背景を探ってみると、ここでも創業社長の逝去にたどりつくのです。
1981年に、伊藤ハム創業者、伊藤傳三氏が他界。
同年、丸大食品創業者、小森敏之氏が病死しています。
一方で、日本ハム創業者、大社義規氏は1996年まで54年間も社長をつとめていたのです。
本書のグラフをみるとわかるのですが、創業経営者の登板中は利益成長が実現し、降板とともに利益は下降に転じているのです。
私の肌感覚とも一致します。
結局は、企業というものは、トップに立つ者で決まる。
誰が経営しているのかで、すべてが変わるわけです。
最後にもうひとつ、興味深い事柄が書かれていました。
経営職適格人材の採用
経営職適格人材の採用についてです。
管理職として優秀な人材は、自分は良き上司に鍛えられたと語ることが多い。ところが、これはという経営者からそういう話など聞いたためしがない。代わりに口をついて出てくるのは、上司とはいつも衝突したとか、上司がバカに見えたという過激な言葉である。
考えてみれば新入社員時代の上司とどこかで立場が逆転するから経営者になるわけで、始めから実力差があっても不思議はない。そういう規格外の部下を上司が嫌うのは、あたりまえであろう。上司の評価を頼りにすると、経営者の卵は潰される可能性が無用に高くなる。
部下を選ぶ側からみれば、あんまり能力が高すぎると、自分の脅威となるわけです。
それは、選びませんよね。
適度に、適度にと、なるわけです。
経営者について、企業経営について、学ばせていただきました。