数寄屋大工で著名な中村外二(1906-1997)。
中村外二のような大工が仕事するのは、茶室や数寄屋建築です。
伊勢神宮の茶室やロックフェラー邸、松下幸之助などの仕事をしたそうです。
伝統的な大工技術と現代の建築
ただ、彼のしたような仕事は、かなり伝統的なもので、そのような伝統建築技術は現代の建築ではほとんど用いられていません。継手・仕口などの木材加工はほとんどが機械によって行われるからです。
なぜか?
それは、もちろん「コスト」です。
いかに卓越した職人といえど、一日に加工できる木材の量はたかが知れています。
反対に、機械であれば、ガーッガーッと短時間で加工できてしまいます。職人は一日当たりの人件費がかかります。さらに処理可能量が少ない。それは坪単価の急上昇につながります。コストが高いわけです。
そのため、現在の建築では、宮大工でさえ、寺社仏閣ではない案件、たとえば、一般住宅のような建築であれば、機械を使っています。すべてを手作業で木材を刻んでいくのは、それだけコストがかかるのです。
キャリア80年の大工棟梁の教え
大工は徒弟制度。
師匠がいて、弟子がいます。
技術継承や仕事をともにしていく上で弟子選びは重要です。
では、中村外二の弟子選びはどういうものであったでしょうか?
人を見る。そのために、掃除をさせるそうです。
隅まできちっと掃除する者はまず伸びる。いい加減にササッとする者はダメ。それである程度、性格や品格がわかるそう。仕事の上手な人は掃除も上手だそう。
家はその人の人格
また、中村外二が語る「家」と「人」との関係が興味深いです。
建築というのはその人の人格。
その人の人格は、その人の家の前に立ったらだいたいわかるそう。
玄関、座敷、道具(美術品・調度品)を見たら、だいぶうるさい人かどうかがわかる。
威張った人は威張ったような建築、質素な人は質素に、成金は成金の趣味しかあらわせない。
大工という仕事そのものだけでなく、「大工」「家」「人」の関係。