桂離宮は、後陽成天皇の弟・八条宮初代智仁親王により、宮家の別荘として創建されたもの。
1615年前後に完成したものとされています。
八条宮家は明治に断絶し、宮内省・宮内庁の管轄になっています。
創建以来、永きにわたり火災に遭うこともなく、
ほとんど完全に創建当時の姿をとどめていることでも貴重。
その回遊式の庭園は日本庭園の傑作とされます。
桂離宮を訪れて、個人的に感じたのは、その緻密さと奥深さです。
安直かもしれませんし、年齢がまだ浅いからかもしれません。
ただ、その一端でも、ここでお伝えできればと思います。
まず、庭園全体の印象は「世界」。
四季折々、海、山、自然。世界すべてがこのひとつの庭園に凝縮されています。
桂離宮入口からのアプローチ
桂離宮へは御幸門から入ります。
当時は、高貴な方々は輿に乗って担がれて移動します。
この御幸門の右側には、輿を置くための石が置かれています。
御幸門自体、茅葺き切妻屋根に自然木の皮付丸太で支えられています。
角柱にせず、丸太で皮付きとは、くだけた感じ、カジュアルな感じを醸し出しています。
これも、受け入れる側の気配りでしょうか。
最初のアプローチは、石畳「あられこぼし」。
桂川の石です。
リニューアルしたそうですが、この調和を出すには大変な苦労が。
それぞれの石の位置が決まっており、石の裏には番号が書かれてあるそうで、
指示された位置に指示された石を置くということを延々としたそう。
それほどまでに徹底されているからこその美観。
美しいと同時に、滑らかなつくりです。
洲浜(すはま)。
これは海を表しています。
手前に見える先端の灯籠は「灯台」。
奥に見える中島と石橋のつながりは「天の橋立」を模したもの。
たしかに池ではあるのですが、これが後々に効いてきます。
桂離宮の茶室群
松琴亭(しょうきんてい)。
桂離宮で最も格の高い茅葺入母屋造り(かやぶきで、入母屋屋根)の茶室。
![](https://www.denhome.jp/mt/wp-content/uploads/2012/01/R0010128-e1327715813414.jpg)
床や襖(ふすま)の青と白の市松模様は現代的なデザインのよう。
拝観時は色あせてしまっています。
落ち着いた他の茶室と違って、奇抜なデザインをしています。
賞花亭(しょうかてい)。
中島の一つで斜面を飛び石づたいに登ったところにある茶屋が賞花亭です。
茅葺切妻屋根に皮付きの柱。
屋根に柱、少しの壁といったガランとした質素なつくり
(とはいっても、現代では同じものをつくろうと思うと、大変高価です。茅葺きも技術的にも、費用的にも高いですし)。
この賞花亭の特徴のひとつが、南側、竹の連子窓を通してみる景色。
前面は池であり、海。
でありながらも、ふと振り返ると、目に入るは森。
贅沢です。
笑意軒(しょういけん)。
茅葺寄棟造りの屋根に杮葺きの庇。田舎風の茶室。
上のほうに、小舞壁から丸く小舞部分が連続して表れてチャーミングな印象。
笑意軒のウリのひとつが、ピクチャーウィンドウ。
![](https://www.denhome.jp/mt/wp-content/uploads/2012/01/R0010207-e1327715774795.jpg)
景色がそこだけ切り取られたかのように見える窓。
天井との陰影がさらに美しさを増します。
額にあたる部分の下側には、舶来品のビロードと金箔。
ぽっかりとそこだけ切り取られたかのような景色。
この美しさをつくりあげるには、どうすればいいのでしょうか。
![](https://www.denhome.jp/mt/wp-content/uploads/2012/01/R0010210-e1327715745600.jpg)
桂離宮の書院群
桂離宮のメインである書院群。
東から、古書院、中書院、楽器の間、新御殿。
雁行形に連なって並びます。新御殿は増築された建物。
一般拝観では、内部は見ることができません。
伺ったときは、メンテナンスのタイミングだったようで、障子が外されています。
屋根の黒に、障子と漆喰壁の白。そこに柱の茶色がラインで入って現代でも美しいと感じる素晴らしさ。
桂離宮の主要な景観を一望できるのが月見台(つきみだい)。
月を鑑賞するために存在します。
月見は月の上った姿を見るだけではないそう。
月がのぼり始める姿から、見始めて愛でるそう。
長い時間かけて、味わうものだそうです。贅沢ですね。
少し進んで月波楼(げっぱろう)。
かなり開けっぴろげな、開放的な建物。
月波楼からの眺めは、船に乗っているが如く、右に目をやれば、海が見えます。
さらに、左に目をやれば、山が見える。
そういう贅沢なつくりです。
![](https://www.denhome.jp/mt/wp-content/uploads/2012/01/R0010286-e1327715716913.jpg)
最後は書院の玄関。
拝観は、御幸門から左手に曲がっての移動でした。
高貴な方々は、そのルートではなく、御幸門から直進してこの書院玄関に行くそうです。
その際の試み。
書院玄関までの間に、庭が一瞬見えるようになっています。
しかし、左右は生け垣。正面には松の木。
あえて、全景を見せずにじらす。
見えるようで、見えないチラリズム。
そういう試みが多用されています。
さて、桂離宮を拝観して感じることは、「外構」と「建物」の一体化です。
住まいづくりにおいては、やはり予算的な問題があります。
そのため、往々にして「外構」をケチってしまいがちです。
外構は全面コンクリートで打ってしまう。
植栽は特にせず。
そういう住宅になりがちです。
しかし、住まいそのものの価値を高める点でも、美的感覚の点でも、
やはり外構をきっちりとつくりこむことが、
結果コストパフォーマンスの高い住まいをつくりあげるものと、でんホームは考えています。
桂離宮の徹底的に考え尽くされた緻密な外構はさすがに難しいかもしれません。
しかし、ワンポイント坪庭をつくって、緑を感じられる瞬間をつくること。
外観で自然と調和がとれ、建物と一体となって絵になる外構計画。
それが住まいづくりにとって大事なのだと改めて気づかされた拝観でした。