高気密高断熱住宅

新住協 九州研修会「Q1.0住宅はこうしてつくる」を企画・参加してきました(2023.09.20)

快適な住まいで暮らしていただくためには、住宅建築業者側も自己研鑽して、良質な住宅をつくる知識や技術を学び、実践していかねばなりません。

そのために、でんホームでは比較的多めだとは思いますが、視察・研修・講習を受けに行っております。

今回は「新住協 九州研修会」に参加してきました。

新住協(新木造住宅技術研究協議会)とは?


新住協という組織をご存じでしたら、かなりマニアックな部類に入ると思います。

新住協とは「誰もが良質な住宅を求められる社会を目指して」を理念として活動している民間の高断熱技術研究機関になります。

一般社団法人新住協代表理事・室蘭工業大学名誉教授の鎌田紀彦氏が中心となって活動している団体になります。

「誰もが良質な住宅を求められる社会を目指して」の理念ですから、特徴としては「快適な省エネ住宅をローコストに供給する」をテーマに掲げていらっしゃいます。

研修会でも印象的だったのですが、コストパフォーマンスの低い技術仕様はあまりおすすめされていなかったです。かなりコストパフォーマンスを意識された仕様で検討されていらっしゃいます。

また、社会的意義が大変大きいと思うのですが、特定の企業や団体に偏向することなく、すべて技術を公開していて、素晴らしいです。

わかりやすくまとめますと、「高断熱高気密住宅をコストパフォーマンス良く実現する技術・ノウハウを研究・公開・研修している団体」になります。

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新住協 九州研修会


新住協(新木造住宅技術研究協議会)は全国で1,000社を超える住宅会社が入っているそうなのですが、やはり北海道、東北、北陸といった寒冷地の会員さんが多いそうです。もちろん関西も多いそうなのですが、九州エリアは会員も少なく、九州支部というのはまだなく、中四国九州支部というかたちでひとくくりになっております。

そのため、九州エリアでは定例会なども行われておらず、あまり活動的ではない状態でした。

そのようななかで、でんホームにお声がけいただきまして、事務局的な役割を担いまして新住協 九州研修会を開催いたしました。

Q1.0住宅はこうしてつくる


研修会のテーマは基本的な内容で「Q1.0住宅はこうしてつくる」というテーマになります。

高気密高断熱住宅が生まれた背景

鎌田紀彦先生が高気密高断熱住宅という技術を確立するまでの背景の説明がありました。

そもそも、30数年前、寒冷地が中心でスタートしました。それは当然ですよね。寒いエリアは冬場の暖房費がとんでもない金額になりますから、ものすごく気にするわけです。

当時は寒冷地でも、断熱材はグラスウール50mm程度の厚みであったそうです。信じられませんね。それで灯油をざっくり年間2,000Lくらい消費して暖房していたそうです。

大きな転機は「オイルショック」です。

オイルショックで直接的に暖房費が数倍になったそうで、それで省エネ住宅を模索するに至った流れだそうです。

鎌田紀彦先生は室蘭工業大学に赴任されて、高気密高断熱住宅の調査・実験をして、だんだん見えてきたそうです。

高気密高断熱住宅の調査・実験から見えてきたモノ

実際、高気密高断熱住宅の調査・実験してきて、単純に断熱材の厚みが厚くなっても、実際には灯油消費量が変わらなかったそうです。

なぜか?

背景として、アメリカの断熱材と工法が日本に入ってきて、そのまま広まったそうです。アメリカはツーバイフォー工法で、日本は在来木造工法と異なります。ただ、それなのに同じような使い方をするもので、気密もとれていないですし、断熱材の施工方法も工法が異なると同じようにはできず、無理やりな感じで悪かったようです。

端的に言えば「気密がとれていない」というわけです。

そこから「気流止め」がなされるようになりました。これでも、7割程度しか発揮されなかったそうです。

次に防湿シート気密を行うことで、ようやく性能が発揮されるようになったそうです。

さらには、グラスウール100mm厚だけでいいのか?という感じで厚みを厚くしていくことで、高気密高断熱住宅が進んでいきまして「暖房費を変えずにセントラルヒーティングみたいに快適にしよう!」というコンセプトで進展していったようです。

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Q1.0住宅のつくりかた

ここからは実際にレクチャーを受けました「Q1.0住宅のつくりかた」のなかで、特に印象的だった事項についてまとめていきます。

グラスウールを推奨する理由


新住協(新木造住宅技術研究協議会)では断熱材としてグラスウールを推奨しています。これは「圧倒的に価格が安いから」です。

その他の断熱材に比べて安価ですし、また、プラスチック系ボード状断熱材「フェノールフォーム」「押出法ポリスチレンフォーム」などは部材として高価なゾーンですから、それらの対比としても、安価です。

グラスウールが安価な理由は「製造コストが安い」のに加えて、「輸送費が安い」というのがあるようです。モノ自体の輸送費はどんな素材でも同じなのですが、グラスウールは圧縮して運搬できるという特性があり、圧縮することで一度に大量の製品を輸送できますから、輸送コスト削減につながり、輸送費が安いので安価に提供できる、となるようです。

暖房エネルギーを減らすには

高気密高断熱住宅を考えていくなかで、暖房エネルギーを減らすということを考えますと、3つのアプローチがあります。

  1. 断熱材を厚く施工してQ全部を小さくする
  2. 換気の熱回収をする
  3. 日射熱を増やす(陽当たりの良い南の窓を大きくする)同時に、住宅内の蓄熱容量を増やす

冬場の暖房コストを下げたいところですが、実際、暖房エネルギーを減らすには上記の3アプローチになります。

断熱材を厚く施工してQ全部を小さくする

一番わかりやすいのが断熱材を厚くすることです。

そうすることで、家全体の断熱性能が高まりますから、Q値自体を小さくすることができます。グラスウール100mmを200mmにすることなどです。

換気の熱回収をする

次は「換気の熱回収」をする、です。

今回の研修会で最も大きな変化のある知識でした。

でんホームでも、一種熱交換換気システムを導入されているお客様も多いのですが、その一方でコスト的にしますから、未導入のお客様もいます。

未導入のお客様の住み心地を拝聴しますと、自分が体験している、でんホームモデルハウスの温熱環境とはかなり異なる意見もちょいちょいありました。「冬場に寒い」とか。

どうしてかな?と色々と検討して、熱交換換気を入れている人・入れてない人で大きく差がありそうということが体感的にわかりました。そのため、でんホームでは数年前から、できるかぎりお客様には熱交換換気システムの導入を推奨してきました。

そのことがやはり正しかったのだと、理論的・数値的に説明いただいたので、よかったと感じた次第です。

日射熱を増やす(陽当たりの良い南の窓を大きくする)同時に、住宅内の蓄熱容量を増やす

ここで意外に重要になってくるのが「日射熱を増やす」です。

でんホームのお客様宅でも実例あるのですが、同じ断熱仕様でも、開放的な場所で南側に大きな窓があるお家ですと、冬の暖房コストが圧倒的に低かったです。同じ仕様でも、でんホームのモデルハウスは狭小地ですし、都心部ですから、南側に大きな窓を設けることもできていないので、寒いですね。

窓を大きくすると、熱損失が増えます(Q全部が大きくなる)。その反面、それを上回る日射熱を取り込むことができれば、暖房エネルギーが減ります。ですので、南東~南西の陽当たりの良い窓が必要になります。

その一方で、福岡エリアは日射量がそこまで多くないです。ですから、高気密高断熱住宅の行きつく先である「無暖房住宅」の実現はかなりハードルが高いそうです。

冷房エネルギーを減らすには

暖房エネルギーを減らすことの次は、冷房エネルギーを減らすというテーマになります。

冷房エネルギーを減らす上で、暖房エネルギーと異なる点があります。それは暖房時とは逆に「日射熱」と「室内発生熱(人間も熱を発生させますし、調理したり、家電も熱を発します)」が冷房負荷を増やします

これが高断熱化のレベルを上げても、大幅には冷房負荷が減らない理由です。

冷房エネルギーを減らすには

  1. 断熱材を厚く施工してQを小さくする
  2. 換気の冷熱改修をする
  3. 日射熱を減らす(東西の窓を減らす。日除けをする)

1と2は暖房の場合と同じです。

異なるのが「日射熱を減らす(東西の窓を減らす。日除けをする)」です。

窓を減らすかどうかはプランや敷地状況によりますし、一概には言えませんが、日除けをするのは素晴らしいアプローチになります。日除けは具体的には「庇」や「すだれ」になります。窓の外側で日射遮蔽できるモノを使うということです。

トリプルガラスのサッシは使わなくていい

今回の研修会でかなりインパクトのある学びだったのが「トリプルガラスのサッシは使わなくていい」です。

もちろん前提条件があって温暖な地域で、です。それは福岡エリアも含まれますから、福岡ではトリプルガラスのサッシは使わなくていい、となります。

これは計算して説明されました。

部位別の暖房負荷削減率は以下の通りです。

  • 樹脂サッシ+アルゴンガスLow-e16mmペア:-38.3%
  • 樹脂サッシ+アルゴンガスLow-e16mmトリプル:-38.9%

これは全箇所をトリプルガラスのサッシに変更した場合になりますから、北面のみであったりすれば、多少は良好な結果になろうかと思います。

ただ、ペアガラスをトリプルガラスに変えたところで、コンマ6%しか改善しないのは驚きです。

トリプルガラスにしても、暖房負荷が変わらない理由

トリプルガラスにしても、暖房負荷が変わらない理由は「日射熱が減るから」です。

トリプルガラスにすることで、UA値はかなりよくなります。数字上はメリットが大きいです。

その反面、日射熱が減りますから、余計に暖房しないといけなくなります。ですから、トータルでは「お金はかかるが、暖房費は変わらない」となります。

ですので、「温暖地ではトリプルガラスは要らない」ということになります。

まとめ

まだまだ、技術的な内容も含めて、大量な情報があるのですが、書ききれませんでしたので、ここまで。

高気密高断熱住宅の技術的な面や知識を学びまして、お客様に上質な住宅を建築させていただければと日々、研鑽しております。

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